木造住宅とは?耐用年数やメリット・デメリットを解説
住宅には、さまざまな構造のものが存在し、木造住宅もそのひとつです。
住宅ごとに耐用年数が決められており、その住宅で過ごすうえでのメリットやデメリットも異なります。
今回は、木造住宅の耐用年数とは何年なのか、木造住宅に住むメリットとデメリットを解説します。
木造住宅における耐用年数とは
木造住宅とは、柱や梁などの構造躯体を木材で造っている住宅のことです。
日本では、古来から木造住宅をスタンダードな住宅として利用しており、現存する木造建築物のなかには1300年残る法隆寺の五重塔などがあります。
ただし、基本的に木造住宅の耐用年数は短く、鉄骨造など耐久性の高い建物と比べると強度で劣るのが難点です。
耐用年数とは、その建物を何年間使用できるかを示した数値になります。
木造住宅の法定耐用年数とは
木造住宅の法定耐用年数は、ほかの構造の建物よりも短く22年となっています。
法定耐用年数とは、税金などの計算のために便宜上設けられている耐用年数の基準です。
建物は建築時点から年々価値が減少していくため、税金の計算や売却・購入の際は減価償却を計算する必要があります。
法定耐用年数は、この減価償却費を計算しやすいように設けられた年数です。
そのため、築22年に近づくにつれて、木造住宅の価値は0に近づきます。
新築住宅と中古住宅の税制上の公平性を保つために設定されたのが耐用年数であり、木造住宅が築22年を超えたからといって、必ずしも居住できなくなるわけではありません。
実際の耐用年数とは
木造住宅を使用するうえでの耐用年数を寿命といい換えるのであれば、物理的耐用年数や期待耐用年数が近い概念になります。
物理的耐用年数とは、工学的な視点から見て、建物の構造材が何年間使用に耐えられるかを考える耐用年数です。
建材は、物理的原因や化学的要素によって劣化していくため、建物として使用できる年数を劣化具合から計算します。
実際の条件は、建物を建てる業者や気候、木材の種類、メンテナンス状況によって異なるため、基本的には目安の年数です。
期待耐用年数とは、一般的な維持管理でどの程度の期間その住宅を使用できるかを考えた年数です。
これには、リフォームなどによって延命された住宅の性能も含まれています。
これらの耐用年数は、法律で規定されている法定耐用年数と異なり、実際の住宅を検査するまでわかりません。
また、耐用年数には、税務上のものだけでなく、市場での需要が見込まれる期間を示す「経済的耐用年数」も存在します。
木造住宅で暮らすメリット
木造住宅は、これまで日本の主流だった住宅であり、価格が安くメリットの多い構造です。
木造住宅のメリットには、快適に過ごせるといった想像しやすい点から、耐火性の高さといった意外な特長まで、さまざまなものがあります。
気密性が高く過ごしやすい
木造住宅のメリットは、気密性が高く過ごしやすい環境を実現できることです。
比較的耐久性の低い木材を使用するからこそ、木造住宅では壁や柱を増やして耐久性を高めます。
これにより、壁の面積が広く窓が小さいデザインになることが多く、高い気密性を実現できるのです。
また、木材は断熱性や調湿性の高い素材であり、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせる傾向にあります。
調湿性の高さは、結露やカビの防止にも役立ち、梅雨や夏場のじめじめとした空気のなかでも過ごしやすい環境を実現できるでしょう。
日本の環境に特化した素材として、長らく建材に使用されてきた理由でもあります。
建築にかかる費用が安い
木造住宅では、建築にかかる費用が安くコストを抑えられます。
鉄骨造や鉄骨鉄筋コンクリート造は、コストの高い鉄やコンクリートなどの素材を使って建てるため建築費用も高いです。
木材は比較的コストが安い素材であるため、建築費用も安く済むメリットがあります。
また、木造住宅は建物全体が軽く、土地の改良工事や基礎工事にもそれほど費用がかかりません。
さらに、素材の加工にもあまり時間がかからない分、工期を短くすることもできます。
ただし、実際の費用がいくらになるかについては、敷地の広さや使用する木材の種類によって異なるため注意しましょう。
一戸建て住宅の平均的な坪単価は60.4万円ですが、木造住宅は57.1万円程度になります。
耐火性が高い
木造住宅のメリットは、温度が上がりにくく耐火性が高いことです。
薪に火をつけるのに時間がかかるように、建材に利用されるような木材は火がつきにくく燃えにくい傾向にあります。
これは、木材の熱伝導率が低く中心まで熱が伝わるのに時間がかかるためです。
そのため、住宅で火災が発生しても構造体は残り、家の形はそのままになることもあります。
鉄は熱伝導率が高い分、火災で高温になると折れやすくなり、火災の最中に家が倒壊する可能性が高いです。
木造住宅で暮らすデメリット
木造住宅には、手に入りやすさや快適な住環境といったメリットがある一方で、生活するうえでのデメリットもあります。
画一的な品質にするのが難しく、天然の素材ならではのデメリットなどを抱えているのが特徴です。
品質を統一しにくい
木造住宅のデメリットは、工場などでまとめて建材を生産できる鉄骨造などの住宅と比べて、品質を統一しにくいことです。
建材を加工する工場自体はあるものの、組み立てるのは現場の職人の判断であり、部位によってはその場で建材を加工します。
そのため、木造住宅の品質は建設を担当した職人の腕に左右される面があるのです。
工法によっては、職人の技量次第でさらに仕上がりに差が出てしまうため、施工会社選びを慎重におこなう必要があります。
また、構造上取り除けない壁や柱が生まれる可能性が高く、リフォームや間取り変更で制限を受けることも多いです。
工法や希望する間取りを実現できそうかについては、施工会社によく確認しておきましょう。
防音性が低い
木造住宅のデメリットは、防音性が低く騒音に悩む可能性があることです。
木材は振動を伝えやすく、遮音性が低いため防音性能が高くありません。
そのため、外からの音が屋内で響いたり、屋内の音が外部に漏れたりする可能性が高いです。
たとえば、住宅が大通りに面していると、自動車が行き来する音が気になって生活に支障が出ることもあるかもしれません。
また、楽器の演奏や音の出る趣味をおこなおうとすると、周囲から苦情がくる可能性もあります。
もし、木造住宅の防音性を高めたいのであれば、床や壁、天井の構造体を二重にするなどの工夫が必要です。
ただし、こうした防音対策をとるのであれば、その分工事費用が通常よりも高くなります。
虫の被害を受ける可能性がある
木造住宅のデメリットは、定期的に対策をとらないと、害虫による被害を受ける可能性があることです。
木材はシロアリなどの害虫にとって、食料や巣になる建材にあたります。
そのため、定期的に防蟻処理をおこなわないと、シロアリに建材を食い荒らされてボロボロになる可能性があります。
床下にコンクリートを敷き詰めるベタ基礎を選択すれば、被害を防ぎやすくなりますが、薬剤を使用した防蟻処理も定期的におこなったほうが無難でしょう。
また、防蟻処理には費用がかかるため、メンテナンスに手間やお金がかかるのがデメリットといえます。
さらに、木造住宅ではシロアリ以外の虫が発生することもあるため注意が必要です。
まとめ
木造住宅の法定耐用年数は22年ですが、使用している建材やメンテナンスによっては実際の耐用年数が変わる可能性があります。
建築にかかるコストが安く、断熱性や吸湿性に優れており燃えにくいのが特徴です。
その一方で、品質にばらつきが生まれる可能性が高く、防音性や防虫性が低い点には注意しましょう。